短歌10


今日日まで生き抜いてきたことになど触れないように三月でした

宝箱なんて無いから梅雨の日も理想家だった 秘密が降ると

森の木が手を繋ぐもの1.2人分離れ寄り添っている

あの道の砂利が言うには二つ無い影もウレキサイトのようで

悲しいが宇宙の夢は遠く在り それが弱める重力に在り

痛覚は僕ら銀色を見てきたなどと言うもう無いカタツムリ

宇宙船私信が来ては訊いてみる 次のシャボンが割れやすいかだけ

名も知れぬビルに浮かんだ=(イコール)で混ぜてよ進む/止まるの価値を

大げさな夏の湿度に溶けているキャラメル片のような賢さ

いつか幽霊になって身体ごと嘘に慣れてく話(はなし)してみる

墨を磨る 生きてることの金色が膿のようにもみえる日だけど

アルミ削り出しの機器に「後悔をしたことはある?」と聞くようなこと

オーブンの熱が静かに魚焼き「ドーパミンみたい」とコップの言う

鍵拾うほんのひととき蹠行(せきこう)を 猫の見ていた夢のようにも

窓は咲く 祈るところへ背を向けてばらけていったそれを見ている

「ずっと見ていない青空のことなど忘れて僕と」詠み人知らず

六月もいつかガラスになると云う 訊かれる前にも聞いた気がして

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