短歌9


「生まれゆくことは不幸」の意味をまだ塗り替えながら春は続いて

メランコリ親和、ドラマを終わらせてそのたび意味は羽音を立てて

結末をナイフのように研いでゆく その前のことは(低音だけが)

爪の先ですらなれないものをふとロックンロールに当て嵌めてみる

塩飴が通奏低音を清めてどこへ行くのさ、消え損なって

根性論みたいな雲だ 為せば成りそれでも果てに着くのだろうか

この夜に世界と少しがあるのならどちらだろうね 任せて、嘘は

春と死ぬ色はジェッソに似てるはず 希望だなんて聞き飽きたから

居たきりの四面楚歌にもカチカチと鳴る赤ランプまだ道のまま

誰も救わずに行くのは難しい 買ったリボンを使い切るほど

踊り字を部屋に撒いては踏むものが血と正誤とを 晴れてるね、外

電話線残して眠れハルモニア 夜汽車の先がどうなろうとも

結局は凍えるに足る細胞か 黙する椅子とずれていく、ただ

形だけ古びたスーツ、朝のこと90°だと思ってた頃

おかえり燦、おかえりメルヘン そんなこと運ぶみたいなマッチ全てで

君や僕なんて書くには細すぎる糸で開けたのでしょう、と紺は

このままさ、キアロスクーロ決めちゃおう 奇跡を捨てて受け取る切符

inserted by FC2 system