朝露と約定

 
消跡、もっと綺麗な歪みへ。


誰の追体験でもないと言えば嘘になる
行こう、と言った映画だけが残るとしても


鋏の傷だけが知るフィクションの柔らかさだった
息をして廃る、
痕なのだからそれが良かった


ステープラーに詰めた融点
指の全てで静けさを、
シャープナーに落とした沸点
息の全てにこれからを


白波のひとつひとつ、致命傷のような話を重ねて
まだ無いなめらかな祈りに
銀の錘を計ってくれない


沢山あって、それだけ跳ねた
もう残っていない、
来るべき夕立のための歌


ねじ巻きになれると限らない全ては
春に置かれて、リトマスの雪に譲って


廃線のレイテンシを知って
いつかどこかで会いましょう
燃えきった火と呼ぶ、
泣きそうな空


御伽噺で砂を散らしてよ
戻れなくなっても火の形には違いなかった


2001年間の綺麗なものを電球と綴った
いちばんのヒーローを挟んで、
向こう側の黒で会えたら


寝息にならないリポグラムの、
砂を伝って飲む水のこと
朝露か指か、
在れてしまえる朝が来ること


運命をささやいた薄っぺらな枯れ葉
音色と呼ぶなら赤くなくとも


効き目を演じて進む全てへ
星だけは増やせなくても
足りる拍手で地図を終えてよ


決まらない利き腕で、雪解けを演じていて
朗報の間を泳いで
パズルのひとつ目は、
靴底の模様に似ていて
落とし物が正解になるまで、
ある日を迎えて


浮上せよ、と言ったから
どこへ落ちたっていい
一枚の金貨のようだった


それは何度でも呼吸論の部品だった
消えない言葉に吹かれるほど足踏みが足りない


薄膜の奥で、二度とないを何度も
心と呼ばれて光った、
生きる全ての警告音


初めの一歩に素敵を探して
主義のない歩行に、アクアリウムを落として


砂時計の心配事すべてで身体だった
今はもう、あの葉の先から


パレードを濁して描くから
次はお互い、実在できたら

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